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僕の公務員試験全記録

以前受けた公務員試験の受験記録を掲載しています。 参考になれば幸いです。

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2-1.教養試験対策

 教養試験については6~7割とれればよい、という定説がある。一方で僕は6割取れたら十分だと体験から感じた。
 例えば、東京都の試験では、教養択一は2007年の試験から足切り用にしか使われなくなった(4割以上取っておけばおそらくOK)し、県庁の試験でも僕の点数は56/100。専門試験だって75/120で、足しても131/220。得点率は6割をぎりぎり切っている。それでも全体の順位(1次試験のみ)は36/520位なのである。若干今年の地方上級試験が難しかったとはいえ、それにしても教養択一の全体的な到達ラインは変わらないと思う。
 教養試験で力を入れるとすればむしろ一般知能分野を相当鍛えるのが理想で、一般知識分野についてはかなり絞り込んで完成度の高い科目を数科目(なるべくたくさん出題される科目で)作っておく。その方がもしかすると賢い戦略なんじゃないかなと現時点では感じている。

●一般知能分野
 一般知能分野は文章理解+資料解釈+数的推理+判断推理を1つのセットとして他の科目の勉強ができなかったときでも毎日必ずやるようにしていた。
 この科目については、アドバイスをくれる人によって「絶対毎日やらなきゃだめだ」という人と「どうせ毎日やっても変わんないよ」という人がいた。僕自身は性格上毎日やらなきゃできないだろうな(特に算数系はできる気がしなかった)、と思っていたし、どうせ変わらないのかもしれないがやっても損はなかろうと思ったので毎日少しずつでもやる方をとった。結果的に、怠けた時は「勘が鈍る」状態になると感じたのでやっぱり毎日やっていて良かったと思った。

○文章理解
 この科目は毎日2問ずつ自力で解いた。内訳は現代文1、英文1、である。古文については東京都では出ないのでやっておらず、地方上級対策でもたった1問なので問題集の新しい問題が切れたらそこでやめた。ちなみに、他人の合格体験記で本番の問題数に合わせて問題を毎日こなした人の話も読んだが、直前期ならともかくあまり早いうちからやっていると新しい問題がなくなってしまってつまらなくなりそうだったのでペースは抑えた。
 基本的に毎日新しい問題を2問ずつやっていたので問題集も一番多く買った科目である。使った教材は、『スーパー過去問ゼミ2』(実務教育出版)、『公務員試験合格の500シリーズ 地方上級〈教養試験〉過去問500』(実務教育出版)、『過去3年本試験問題集 東京都Ⅰ類(事務)』(TAC出版)、『過去問セレクション⑮文章理解』(早稲田経営出版)、『過去問精選問題集 出たDATA問⑩文章理解 実践編』(七賢出版)などひたすら未見の過去問を探して解いていた。
 要旨把握も内容一致も最初に選択肢を見るというのは鉄則であろうが、要旨把握については選択肢をサラサラと確認した後、本文を読み特に逆接のあと接続詞のあとに注意して問題を解いた。内容一致は要旨把握より念入りに選択肢を確認(キーになりそうなところに軽くアンダーラインを引くなど)してから本文を読み、とにかく一致するものを探すというやり方にしていた。文章理解は大学受験の頃からセンスに頼るのは危険だと考えていたので自分なりのやり方を見つけられたのはそれなりに役立った。
 英語は単語力が不安だったため、『Core1900』(Z会)という「イエロー本」でも紹介していた「英文で覚える英単語集」を1日1~3ユニットずつ流し読みをしていた。単語は結局そんなに身についていない気がしたが、それでも継続してやっていた頃の英文の点数は良かったので意味はあると思う。

○資料解釈
 この科目は地方上級では1問くらいしか出ないのに東京都では4問も出るのでおざなりにするわけにもいかず、仕方なく毎日1問ずつ解いた。使った教材は、主に畑中さんの『畑中敦子の資料解釈の最前線』(LEC)と『スーパー過去問ゼミ2 文章理解・資料解釈』(実務教育出版)。
 解説が丁寧な『最前線』をひと通り解いてから、解説があっさり系の『スー過去』に移るとなんとなく適当に問題を解いて終わり、という雑な習慣がついてしまい、東京都の1次直前にスランプに陥った。自信回復のためにもう一度畑中本のやさしいところに戻って復習。なんとか調子を取り戻せた。結論、あまり難しいのは無理に解けなくてよいと感じた。腹が立つだけである。

○数的推理&判断推理
 一般知能分野では、とにかくこの科目がネックであった。そもそも中学受験などとは無縁の僕には○○算というものとは全く縁がなくやり方を知らないため最初はできる気がしなかった。ただ、大学時代の就活のSPI対策の時、やり方を少し勉強したらできるようになったこともあったのでとにかく同じ問題集を繰り返し解いて解き方を学ぼうと思った。
 使用教材は主に畑中さんの本(『畑中敦子の数的推理の大革命』、『畑中敦子の判断推理の新兵器』、『畑中敦子の天下無敵の数的処理①判断推理・空間把握編』、『畑中敦子の天下無敵の数的処理②数的推理・資料解釈編』(いずれもLEC) ) 。
 初級用のもの(『天下無敵』シリーズ)を最初に6回通りずつ解き、その後は上級用の『大革命』と『新兵器』に移行。そちらについても6回通りは解いた。本番は結局あまりできなかったが、やっていなかったら0点だと思うのでやった意味はあったと思う。できないなりにも本番で試行錯誤できるだけのパターンを覚えられたことは大きかった。
 なお、併用したというほど使ってはいないが、島村さんの『カリスマ講師のマル秘授業公開 数的推理・判断推理』(洋泉社)も流し読みして、真似できるテクニックだけ試験終了間際に使うようにした。中でも、「きれいな数が正解らしい?」という「うわさ」はよく使ったし、他の科目にも使ってみたことがあった。試験終了間際ではそれなりに助かった。

 勉強を始めた当初は午前中いっぱいを使って一般知能分野をやっていたが、数的推理と判断推理合わせて2~3時間ぶっ通しで苦手科目に取り組むため、それだけで頭のキャパがいっぱいになってしまい、その後の学習に悪影響を及ぼしていた。その時、今村潤平著の『公務員試験 最新最強のスピード合格法 2008年度版』を読み、「数的処理は文系も理系も90分で1ピリオド。」との記述に出会った (根拠は…「文系タイプの人が90分以上、たとえば3時間数的処理を勉強すると、頭の1ヵ所に負荷がかかりすぎて頭痛を起こし、急速にモチベーションが下がってしまいがち。」だからだそうだ)。すると、キャパの問題は一応解決したのだった。

 ちなみにこんなところで勉強法の話だが、僕の場合、公務員試験の勉強は基本的に①自力で問題を解く科目と②自力で問題を解かない科目に分けていた。例えば、一般知能系や経済原論は①のタイプで、その他の専門科目などは「自己流正文直し」を基礎に据えた②のタイプの科目である。①か②のどちらかに偏ると頭のキャパがいっぱいになるので長時間学習は難しくなってしまう。そこで①タイプの数的処理2科目と経済原論をインプット中心学習をする②の科目の合間に入れることで生理的にも長時間の学習が可能になった。自分なりのコツは、同じ種類の科目だけで頭がいっぱいになる前に(まだちょっと余裕かな、ぐらいで)①→②、もしくは②→①に勉強内容を変更するのが一番はかどった。

●一般知識分野
 一般知識分野については結局あまり手が回らなかったというのが正直なところである。
勉強してもしなくても概ね6割くらいだった。対策もできていないのにそれでも僕が教養択一で結構上位の方に入っていたのは、結局みんな対策が不十分だった、手が回らなかった、ということに尽きるのではないかと思っている。

○数学
 何の対策もしていない。
できそうなやつを勘でやったら結構当たったこともある。どうせ1問しか出ないのでまあいいかと思っていた。そもそも数学は高校時代から大の苦手で、模試で0点を記録したこともあるので、ちょっとやそっと勉強したくらいではどうにもならないだろうとさっさと諦めた。

○物理
 高校で初めて出会って「あ、この科目は僕には無理だ」と早々と悟ったため、試験でもやるだけ無駄だと思って捨てた。たまに勘が当たったりもしたがこの科目の場合は本当に全くの勘である。

○化学
 これも何も対策はやっていないが、高校の2年くらいまで文系クラスでもあったような気がして、たまにうろ覚えだったものが出てきてできたりしたこともあった。勘をフル動員して2問中1問を当てようと頑張った(笑)。

○生物
 生物は一応センター試験で80点くらいは取っていたのである程度の素地はあった。
『公務員試験対策最新版パスラインシリーズ 自然科学』(時事通信出版局)の問題は難しく挫折。それほど時間も取れなかったために『センター試験 生物Ⅰの点数が面白いほどとれる本』(中経出版)の「ポイント」を何回かざっと目を通して知識を補充した。あとは、『1問1答 大卒公務員の過去問 自然科学』(三修社)と模試でできなかった問題を確認した程度。

○地学
 地学は高校でやったことがないのだが、捨ててはいけないと書いてあるので『公務員試験対策最新版パスラインシリーズ 自然科学』(時事通信出版局)を我慢してやりきったら案外知識がついた。後は、『センター試験 地学Ⅰの点数が面白いほどとれる本』(中経出版)と『1問1答 大卒公務員の過去問 自然科学』(三修社)で終わり。仕上がったと言えるのかどうかは分からないが、それなりに点は取れるようになった。

○日本史
 イエロー本には「捨てるとしたら日本史ぐらいだ」と書いてあるのだが、僕は高校時代、日本史だけは得意だったのでむしろ得点源であった。ただ、そうは言っても完全に力は落ちておりもう一度なんとかちょっとは取り戻す必要に迫られた。
 問題演習なども本格的にはできなかったが、実況中継本や講義風本を何冊か通読。公務員試験の日本史は時代の判定がある程度正確に出来れば、選択肢の間違いが大げさで簡単に正誤判定できることが多かったのでそれほどは苦労しなかった。
 竹内さんの『超速! 日本史の流れ』シリーズ(ブックマン社)は高校時代から好きで今回も好んで使った。読みやすく役に立つのはもちろんだが、収録されている小話に結構励まされるし、モチベーションも上がるのでそういう意味でもなかなかいい本だと思う。

○世界史
 高校2年まで世界史の授業があったからいいようなものの、メインは日本史選択であったためかなりのうろ覚え。とりあえず『公務員試験対策最新版パスラインシリーズ 人文科学』を苦労してやったり、『1問1答 大卒公務員の過去問 人文科学』をやってみたりもしたが、範囲が広すぎて結局最後は『1問1答』に出ている範囲だけに絞って対策。あまり得点率はよくなかったが、0点ということもなくなった。時間があればちゃんと勉強したかった科目である。

○地理
 地理は『公務員試験対策最新版パスラインシリーズ 人文科学』をやっただけでだいぶマシなレベルになった。
 瀬川さんの『瀬川センター地理B講義の実況中継』(語学春秋社)には重要事項を吹き込んだCDがついていて便利だった。ポイントなど地図を使って分かりやすくまとめてある箇所に絞って参考書で知識を補充し終了。

○思想・文学・芸術
 対策せず。文学と芸術は雑学で十分カバーできた。思想はちゃんとやっとけば良かったとも思った。

○政治経済
 結局、専門試験の範囲とかぶってるだろう、ということでほとんど対策せず。ただし、かぶっていない部分でここは知らないと無理だろうと思う分野だけ『センター試験 政治経済の点数が面白いほどとれる本』『センター試験 現代社会の点数が面白いほどとれる本』(ともに中経出版)で斜め読みしておいた。

○時事・白書
 『公務員試験 速攻の時事』(実務教育出版)を徹底的に読み込めばOK、とイエロー本にはサラっと書いてあるわけだが、そんなことができれば誰も苦労しないわけである。OKじゃねえっつーんだよ(笑)。
 この科目はむしろ同じ『速攻の時事』でも『速攻の時事 トレーニング編』(実務教育出版)の方を効果的に使うべきだと考え、前述した自己流正文化を施し3~4回繰り返した。その方が時間が短くてすむ。
 他のインプットとしては、LECの「時事白書ダイジェスト」のDVD講義を受講した。先輩から「時事関係についてはさすがに予備校が強いから利用した方がいい」と勧められたためである。なかなか届くのが遅くハラハラさせてくれたが、価値は十分にあった(時間がなかったが4月のある土日で一気に聞いた)。講師が喋ったところだけマーカーを引いて(出そうなところだけ喋ってくれるので助かる)、あとは何回もパラパラ直前に見直した程度。それでも東京都の教養ではまさに時事問題に救われ足切りを免れた。

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2-2.専門試験対策

 試験勉強は完全に専門試験対策中心で行っていた。
しかし、科目が多すぎ、ある程度の科目数を手がけると、新しくある科目ができるようになった代わりに今までやったものの知識が抜けていく、というような悩みが出てきた。復習も含めた綿密な学習計画の立案が必要だと痛感。いろいろ悩んだり、試行錯誤した結果、「法律系、経済系、行政系それぞれ毎日1科目以上は触れる」というルールを作り、それらを同時並行で進めていく計画を立てて仕組みを作り上げて取り組んだ。仕組みを作って本気でやった4月の1ヶ月で実力はかなり伸び、東京都の専門択一では40点中30点台後半が狙えるようになった。
 一方、専門の記述試験(東京都の1次試験でのみ出題)の対策は思ったようにできず、結局合計1科目10論点ほどしか用意できなかった。専門記述を乗り切れたのは完全に運であった。

○憲法
 イエロー本では×印がついていたが、憲法のインプット本としては郷原さんの『郷原豊茂の憲法 まるごと講義生中継』(TAC出版)を1月中の学習初期に通読した。たしかに600ページに迫るほど分厚い本であるが、中途半端な出来の200ページの本を嫌々読むより、読むのが面白いこの本を(もう2度と通読する時間がなかったとしても)通読しておいて良かったと思う。特に、憲法の判例は事件名がそれぞれついていて印象に残り覚えやすい。この本だけでかなりの知識を仕入れることができた。記述対策の部分は郷原さんの言うことが高度すぎてよく分からずかえって混乱するので飛ばしてどんどん読みすすんだ。
 なお、基本書は芦部本(芦部信喜『憲法』岩波書店刊)を書店でパラパラと立ち読みしたが全く意味不明。その時点での自分には意味がなさ過ぎると感じたので一切使っていない。そういう意味では「イエロー本」に出会って本当によかったと思っている(「基本書は使うな!」と書いてある)。

 郷原さんの本を読みながら、読み終わった単元を『スーパートレーニングプラス 憲法』(TAC出版)の加工を進めていった。『スートレ』を3回ぐらい繰り返してからはすぐ『スーパー過去問ゼミ2 憲法』(実務教育出版)に移り、その後はもっぱら『スー過去』を繰り返した。数的推理&判断推理も少なくとも6回ずつはしっかり繰り返したと前述したが、憲法も5回は繰り返した(アドバイスをくださった先輩曰く、「分厚い問題集を5回繰り返すのが目安」ということだったので目標にしていた)。繰り返すといっても最後まで終わったらもう1回転目…というように繰り返したのではなく、イエロー本が紹介しているように3日を1セットで復習していけば1回どおり問題集を通せばそれだけで3回転させたことになるし、その方が僕の場合はよく身についた。他の科目についても主要科目は5回以上繰り返してやったがすべてこのやり方である。
 憲法はみんな得意科目にしてくるので、問題集の収録問題も基本的には全てこなした。ただし、『スー過去』の第9章の総合問題(27と28)については、必要以上に時間を取られそうだったのと、それまでの過去問ができればいろんな問題を混ぜられてもできるだろうと考えて省いた。

○民法
 民法も郷原さんの『民法のまるごと講義生中継Ⅰ・Ⅱ』(TAC出版)を読んでから『スーパートレーニングプラス 民法』(TAC出版)の加工。民法で使った問題集は『スートレ』だけである。イエロー本の薦めた問題集をそのまま取り入れた格好ではあるが、復習の効率を考えると、『スー過去』を選ぶべきだったかとのちのち後悔した。郷原さんの実況中継本は非常に出来がよく、この本があったから民法をとりあえず勉強できたと思う。大感謝である。
 『スートレ』は、発展問題レベル2は難しく、正文に直して読み返すにしても頭の中での処理に時間がかかりすぎるので完全に省いた。加工は発展問題1まではカバーしたが、最終的には発展問題レベル1も省いて基本問題だけを繰り返した(理想は全範囲基本問題を潰し、下記の範囲だけは発展問題レベル2も潰す予定であった。しかし、最終的なチェックでは下記の範囲を基本問題だけ確認、という1段階下のレベルの対策しかとれなかった。)。『スートレ』の具体的な学習範囲は、イエロー本の「捨ててはいけない超重要ポイント」を参考に…

・民法Ⅰの1章の1、2、3、6(権利の主体、法律行為⑴法律行為と意思表示、代理、時効)
・民法Ⅰの第2章の2、3、6(占有権・用益物権、物権変動、抵当権・譲渡担保権)
・民法Ⅱの第1章の3、5、6(債権者取消権、多数当事者の債権関係、債権譲渡・債務引受)
・民法Ⅱの第2章の2、3、6(契約各論⑴売買、契約各論⑵賃貸借、不法行為)
・民法Ⅱの第3章の1、2(婚姻、親子)

以上の範囲に絞って学習した。結果的に深入りしすぎない程度に留められたのではないかと思う。本番でも一応基礎を固めておけばそれなりに応用が利いたし、基本の正文に慣れているだけで正誤の判断はできた。特に2007年の東京都の問題は簡単だったため、すぐ正誤の判定だけはでき、民法は満点を取ることができた。

○行政法
 実は法律系の中で出来るようになるまでに一番の苦労を要したのがこの行政法であった。
まず、インプット本にロクなものがなかったのが大きい。「イエロー本」でも相対的に推奨してある『行政法のまるごと講義生中継』(TAC出版)はどうにも読みづらく、しかも面白くなかった。といって闇雲に進めても全く全体像が見えてこない上に点数も当然取れない。とりあえず『スートレ』を漫然と何回か繰り返すも、ずっとうろ覚えのような状態なのであった。

 これを打破するために苦肉の策として、僕は法律系科目で唯一行政法のみ『1問1答 大卒公務員の過去問 行政法』(三修社)に取り組んだ。この問題集は文字通り1問1答ばかり載っており、しかもよく出る問題についてはバカみたいに繰り返し出てくる。そのうち、あやふやだった知識が1つ1つ、「点」のようではあるが確立されてきた。2~3回繰り返してやってみると沢山のつながっていないけれど、はっきりした「点」がたくさんできてきた。その上でもう一度『スーパートレーニングプラス 行政法』(TAC出版)や『スーパー過去問ゼミ2 行政法』(実務教育出版)に取り組んでみた。すると今度は「点」が「線」になるようにだんだんリンクし始めてくるのである。ここまでくれば後は早かった。『スー過去』のまとめのページなどをさらっと確認するだけでだんだんと体系的な知識として出来上がっていったのである。個人的な結論としては、行政法の勉強はまず1問1答のような形の問題をゴリ押しでも頭に詰め込み、問題を解けるようになることが第一だと思う。たくさん単独の問題が解けるようになれば、あとは五肢択一の問題を解くことでだんだんと完成に近づいていくものと思われる。
 なお、使用した2冊の問題集で取り組んだ具体的範囲は、『スートレ』は全単元に渡って発展問題レベル1まで。『スー過去』の方は、広い範囲の下地を作るために全テーマに渡って必修問題+無印問題+☆問題をこなした。それらに加えて、テーマ冒頭の頻出度の部分で「地方上級」に☆☆以上がついているテーマにおいては☆☆問題も潰すようにした。また、結局インプット本は使わなかった。

○刑法
 使った教材は、郷原さんの『郷原豊茂の刑法 まるごと講義生中継』(TAC出版)と『スーパー過去問ゼミ2 刑法』(実務教育出版)のみ。郷原さんの本は僕には難しすぎて消化不良を起こした。刑法について満足な対策はとれず、具体的には『スー過去』の必修問題だけ。学習範囲は、頻出度「地方上級」の欄に☆マークがついていればそこだけに絞って問題を潰しておいた。3~4回繰り返し、本番ではできるだけ5択を4択、3択、2択と正解可能性を高められるように、正誤の判定だけは何となくできるぐらいのレベルを目指した。先輩にアドバイスをいただいたように2問中1問は当てるというスタンスだった。

○労働法
 ちゃんと使った教材は『スーパー過去問ゼミ2 労働法』(実務教育出版)のみと言っていい。労働法に関しても刑法と同じように最低限の対策しかしていない。つまり、必修問題しかやっていない。しかし、何問かこの必修問題を解くことによって、めちゃめちゃ重要な判例は自ずから出てくるものなので、それらだけでも3回ぐらい繰り返しやっておくと難問でない限りは本番で手も足も出ない、ということはなかった。

 刑法も労働法も東京都が終わるまでは次の地方上級までにかなりやり込もう、特に刑法なんかは面白そうだったのでかなりやる気だったのだが、面接対策で頭がいっぱいになった結果、結局全然対策ができなかったのが残念であった。ちなみに商法は出なかったので全く触れていない。

○政治学
 使った教材としてはだいたい行政科目はほぼ共通だが、インプットとして『行政5科目 まるごとパスワード(以下『まるパス』)、インプット補助として『行政5科目 まるごとインストール(以下『インストール』)、問題集は『スー過去』、の3点である。これ以外に生講義本も買っていないし、基本書も専門記述で選択した行政学以外は買っていない。インプットは『まるパス』を通読してみたが予備知識のないままこの手の本を読むのはきつかったので通読はかなりきつかった。結局、過去問の加工作業(自己流正文直し)をすることで無理矢理に知識を蓄えていった。漫然と『まるパス』を通読するよりは効率が良かった。
 政治学で『スー過去』の問題つぶしをした範囲は、第7章を除いたテーマ1~26の☆問題まではすべて、後は頻出度の箇所で「地方上級」に☆☆マークがついているテーマは☆☆問題まで潰した。ただし、他の行政科目においてもそうだが、『スー過去』章毎の「試験別出題傾向と対策」というページをよく読み、東京都や特別区では他の地方上級と違って○○という範囲も出題されている、と書いてあればそこを潰す問題の中にいれて学習した。なお、テーマ27~30については、世界史、日本史の近現代史の学習をもって代えた。東京都の試験が終わってからは軽く何回か『スー過去』を読み直したくらいである。『インストール』は全科目の知識チェックに非常に重宝した。最終的に5回くらいは繰り返したように思う。

 行政科目というのは、楽勝科目なんて書いてあるから気を抜いてあまり本腰を入れてなかったりすると、全くもって点数が伸びないという厄介な科目であるが、逆に本腰を入れてやり始めると複数科目に渡って登場する人物などがリンクし始めて実力がついていくのだな、という印象を受けた。

○行政学
 勉強の仕方は政治学となんら変わることはなかった。使用教材もほぼ一緒。潰した『スー過去』の範囲は、全テーマ☆問題までは潰した。その他は頻出度を参考にしたが、「試験別出題傾向と対策」のところにありがたいことに「東京都」も出ていたので、「地方上級」とともに重点的に押さえて学習した。

 一方、専門記述試験対策はこの行政学しか用意できなかった。
行政学を選んだ理由は対策が立てやすかったから、に尽きる。一番大きな拠り所となったのは、LECのDVD講義で行政系の講師が「今年の都庁の行政学は、十中八九特別区の過去問から出ると思います」と断言したことだった。調べてみるとそれほど突飛な予想でもなかったのでここは素直に信じてみることにした。ちなみに、今年の時点で特別区の過去問とは…

H9…行政組織における合議制と独任制について説明せよ。
H10…オンブズマン制度について説明せよ。
H11…稟議制について説明せよ。
H12…官僚制が発達した背景と官僚組織の特徴について述べよ。
H13…インクリメンタリズムについて説明せよ。
H14…行政統制としての情報公開制度の意義について説明せよ。
H15…行政組織におけるライン組織とスタッフ組織について説明せよ。
H16…フリードリッヒとファイナーの行政責任論争について説明せよ。
H17…行政委員会と審議会について説明せよ。
H18…稟議制について説明せよ。

と、なっていて、今年は結果的にフリードリッヒとファイナーがズバリであった。
行政学は19年度から、つまり今年初めて出題されることになった科目であり、門戸を広げるために出題するのにそんな手も足も出ないような難問が出るわけはない、と予想した。ただ、こんなことを偉そうに予想したからといって、あくまでヤマを張っただけであり当日は気が気ではなかった。試験でこんなに真剣にヤマを張ったのは人生初であった。
 教材は『GUTS・21 専門記述政治学・行政学・社会学』(早稲田経営出版)を使用した。非常に評判の悪いこの予想問題集だが独学者はこの本に頼るしかなかった。一方でLECの専門記述のDVD講座を受講したのはいいものの、申し込んだ当時は漫然と「憲法とぉ、行政法とぉ…」とまるで手の回るはずもない次元で考えていたので本気で取り組もうとした時には既に手遅れ。おっ、行政系もあったのかぁ、よかった…などと思うも次の瞬間には「答案例がない」という致命的な事実に愕然。結局、このDVD教材は僕に行政学のヤマを張る手助けをしてくれただけであった(まあそれだけでもLEC様様モノなんだが)。
 ちなみに、後から東京都に照準を当てた講座があったのを知り、どれだけ後悔したかは知れない。ただ、イエロー本では『GUTS』は憲法しか使えない、みたいなことを書いてあったが、一応僕は行政学で受かっているので(採点結果は知らないが…)それほど使えなくもないのでは、と思った。

 専門記述の学習では、答案例を入手しただけで覚えた気になるのが一番怖い。
また、択一の方をいつまでたっても優先しがちで、僕が本格的に論点を覚え始めたのは本試験の1週間前であった。覚える方法といっても、ひたすら解答例を見返すくらいでなんの工夫もない。手で書き写してみるも書くのに30分はかかる上に疲れる。そう何個も書けないのである。あんまりやりすぎると腱鞘炎になりそうで元も子もない(でも友人には「書かないと覚えないよ」と言われた…)。だから、結局最終的にどうにもならなくなって用意できた論点は10コくらいだったわけで、これでもギリギリまで何とか論点を増やそうと頑張ってみた結果なのであった。前日も新幹線の中、電車の中、ホテルで、ずっと覚え続けるハメになった。正直、もっとかっこよく当日に臨みたかったがそれはなかなか難しいらしい。専門記述などは覚えるべき答案例がかなり前から出回っているのだから、1日に1論点ずつ、イエロー本の勉強法通り3日を1セットとして毎日書き写していけばちょっとは楽に当日が迎えられるのだろうか…とうらめしく思っていた。

○社会学
 社会学は東京都でしか出題されなかったので、終わった後は全く触れず。最近は難化していて「イエロー本」などでは予想問題も潰すべきなどと書いてあったが、時間がなかったのでそこまでは無理。よって、使用教材は他の行政科目と同じように『スーパー過去問ゼミ2 社会学』(実務教育出版)と『公務員試験 行政5科目まるごとインストール』(実務教育出版)くらいである。しかし、これも5回通りくらいは繰り返してやったし、TACのデータリサーチ曰く、今年の社会学は「過去問をきちんと勉強した人が大いに報われた年」だったらしく、それなりに実力を発揮することができたように思う。問題の潰し方は他科目と同じ。

○社会政策
 結局最後まで何をやっていいのか分からなかった科目。『公務員試験 行政5科目まるごとインストール』(実務教育出版)に出ていた問題を直前に何回かやった。あとは時事をしっかりやればカバーできると信じていたが効果の程はやっぱりよくわからなかった。

○国際関係
 東京都では出題なし。理論の問題がむちゃくちゃ難しかった。地方上級の本試験も難しく、あとで予備校の先生に聞いてみたが「?」であった。試験勉強ではある程度の深さが限度なのだろう。難問はできなくてもしょうがないと思う。とにかく国際関係は『20日間で学ぶ 国際関係の基礎』(実務教育出版)を3~4回繰り返してやり、あとは時事を勉強するようにしていた。

○マクロ経済学・ミクロ経済学
 この科目はかなり恐れていたし、苦労もした科目。勉強を始めた当初から常に触れるようにしていた。
『らくらくミクロ経済学入門』と『らくらくマクロ経済学入門』(ともに週刊住宅新聞社)は非常に分かりやすくちょっと問題も載っているというスグレモノではあったが、「これだけでは戦えない」と3月になって急に確信した。模試の最中にこれではマズイと思った。試験時間が早く終わったので今後の学習計画を立てていた。このとき既に4月目前になっていたわけだが、そこから『スーパー過去問ゼミ2 ミクロ経済学』『スーパー過去問ゼミ2 マクロ経済学』(ともに実務教育出版)を毎日やるようになりようやく点が伸びていった。何より今までは理論を何とか頭の中に入れようと必死だったのが、『スー過去』をやることで問題を解くための頭に作り変えることができ、この方針転換は非常に大きかったように思う。
 『スー過去』はとにかく無印問題を何回も何回も繰り返して解けるようにした。僕は昔から図などをノートにバカでかく書くのが好きで、1問につきノート1ページ丸々使って問題を解いていた。ノートを異常に消費することになったが、これはなかなかいい習慣ではあった。☆問題や☆☆問題は中には解けるようなものもあったが、ほとんどは理解することにかなりの時間がかかってしまうので効率的でないと思いやらなかった。最終的に多く繰り返した問題は6回以上繰り返した。試験前日は必修問題だけをバーっと確認していったが、『スー過去』の場合は「POINT」が非常に良くまとまっているので確認としては最適であった。

 東京都の試験では非常の基本的な問題が沢山出ていたのでほぼ満点を取ることができた。一方、難しいと評判の地方上級試験の経済は、あんまり難しいのはみんなもできないだろうし、基礎を固めるのが結局は一番だろうと考えて、東京都後に新たな対策はとらなかったが合計ではそれなりに上位で通過していた。

○財政学
 『スー過去』をやり始めたものの、なぜか財政学だけは『スーパー過去問ゼミ2 財政学』(実務教育出版)の「POINT」部分が長すぎて挫折した。しかも、マクロとかなりかぶるため、なんとなくやってみたら案外当たる、ということで気を抜いてしまいあまり勉強しなかった科目である。『1問1答 大卒公務員の過去問 財政学』(三修社)で覚えたらなんとかなりそうな箇所(公債の負担など)だけは何回か繰り返したり、「覚えることノート」(イエロー本でいう「記憶ノート」)に書いて何度も読み返したりして、試験までに頭に入れようとした。経済事情は時事の勉強をすることで代えた。

○教養論文
 教養論文は振り返ってみるとほとんど対策はできていない、といっていい。ただ、いくつかの教材に触れて、とりあえずいろんなものに対応できるように最低限の準備はした。

 まず、一番困ったのは「どんなことを書けばいいのか」ということであった。この疑問を解消するためには『1週間で書ける!公務員合格作文』(三修社)が役に立った。要するに、「タテマエ」でいいんだな、と思えたことでその後だいぶ助かったように思う。論文の書き方として3段落方式と4段落方式があるようだが、僕は求められている論文の分量を考えた結果、3段階方式を選んだ。ちなみに3段落方式とは、①現状(ここを見た!)→②問題点(ここが頭にきた!)→③解決策(ならばこうしてやる!)、ということである。以前試験を受けた友人に勉強していた時のノートをもらっていたのだが、その時の彼の書き込みが( )内である。こういうイメージを持つことでかなり書きやすくなった。

 また、論点などを覚えたりする前に(同時並行?)、いろんなテーマについて論述するために行政の考え方を身につけることが一番だと考えた。予備校EYE主宰の今村さんは自身のブログの中で、

「論文や面接はどうする?政策について語れないと、1次合格が無駄になる。そこで、社説作戦。社説だけ読む。1コ5分で読む。1分でまとめる。問題点、政策、私見。行政を否定してはダメ。新聞のままでも当然ダメ。なぜなら、公務員試験だから。公務員に採用してもらうために、書くのだししゃべる。」

と書いておられ、(この実行はなかなか難しいが)まず視点を身につけるためにはぜひとも必要なことだと感じた。
 特に「行政を否定してはダメ。新聞のままでも当然ダメ。」の部分。これを頭においてニュースを見る。古舘さんみたいになんかコメントしてみる。でも古舘さんは民間の人で行政じゃないから古舘さんと同じ意見じゃダメ。という感じなら意識することなく対策ができた。また、議論に付き合ってくれる父親とニュースを見ながらいろいろ話し合ってみるのも勉強になった。

 もう一つは、最近よく出ている世間的に注目されている自治体首長の著書を読むこと。彼らは「こうしてやる!」と今まで不満だったことを積極的に改善していこうという考えで動いているわけで、その姿勢・視点はなかなかいい問題解決の事例として非常に参考になる。特に、彼らの本には自分が改革のためにどんなことに取り組んだか、ということがたくさん詰まっているそれを自分の中に取り込んでいくのだ。
 僕は在職中の営業で思い知ったことだが、事例をたくさん知っているということは相手を説得するための有効な材料となる。よそで成功したこと、失敗したことなどを知っていれば、論文を書くときだって面接で政策を聞かれたときだってグループディスカッションで討論の内容に具体性を増して議論を活発化させるときだって役に立った。抽象論は一見かっこよく感じるがどうしても上滑りしていき、深い議論にならない。具体例ならイメージも浮かびやすく考えやすいのである。個人的には、文春新書の『知事が日本を変える』という改革派知事3人の対談形式の本が読みやすくて役に立ったかなと思った。
 
 その他、直接的な論文対策として、一般的な幅広い論点を仕入れるのには『2008年度版 論文試験頻出テーマのまとめ方』(実務教育出版)や、LECの「教養記述マスター」の論点編の冊子をさらっと何回か通読したくらいである。なんとなくでもこれらに載っている答案例を通読しておけば困った時の助けにはなるのではないかと思う。特に大手予備校各社では都庁に特化した模試を実施しており、そこでは当然出そうな論点を出題しておくし、解説の中で重要政策の解説とか他の予想論点などが書いてあり役に立つ。ちなみに、今年の各社の模試の出題などを参考に僕が都庁のために用意した論点は…

・東京都の観光施策
・高齢化
・世界に開かれた東京都の課題
・情報化社会
・東京都の防災対策

 のたった5論点であった。4月に入ってようやく始め、準備不足であった。しかも今年の問題はかすりもしなかった(笑)。
 ただ、一応取り組んでみることでデータがないと書けない論点などに気付くこともでき役には立ったと思う。もしデータを覚えたりするとしたら漫然といろんなデータを覚えるのではなく、絞って覚えるべきだと感じた。例えば、高齢化の問題で言えば、とにかく東京都の高齢化率(06年9月のデータで18.7%)の現状を知らなければかなり苦しい論述になってしまうのでそれだけでも覚えておく。また、もう一歩踏み込んで日本の高齢化率(05年7月のデータで20.5%)も覚えておけば、日本全体に比べて東京都は若干高齢化率が低いということが分かり東京都という地域の独自性を示す格好の材料にもなる。その他の示すべきデータ(高齢者のみの世帯が全世帯中に占める割合など)は正確な数字が分からなくても「増加傾向にある」などという表現で逃げることができるわけである。
 本試験ではこのような曖昧さをもって採点をなんとかやり過ごすことも不可能ではないと感じた。柔軟に対応できる方が予想を外された時にも案外強いと思う。
 
※補足
 いいのか悪いのかは分からないが、僕は「タテマエ」で書けばいいとは思いながらも、自分の意見があるときはそっちの方を書いていた(なのであまりいい点ではなかったと思う…都庁は採点結果が分からないのだが、県庁は悪かった)。
 書く内容はともかく、書き方についてはとにかく論理構成を明確に読みやすい文章を書くということを心がけた。これは、ある方のブログに「『所詮、採点者もほぼド素人です』」と書いてあったのを読み、なるほどたしかに、と思ったからだ。このことは模試の採点などでも如実に表れた。そう大したことを書いたわけでもないがとにかく分かりやすく書いただけのWセミナーの模試では教養論文で全国2位になったのだ。どれだけ内容のないことを書いたかということは本論の最後にデータ編の一部として載せておく。まあ記念である(笑)。
 とにかく、受験者が普通の模試よりも多いはずの本試験の論文で採点者が全員行政のプロでありすべての政策のプロということはまずないだろう。だから、政策についても暗記したりとかじゃなくて大いに間違ってたりしなければ大丈夫なのではないかと思うのである。一言一句プレスリリースや公布のままじゃなくても、かいつまんで要点を書けるくらいの知識があればいいのではないか。そして曖昧なところはそれなりにお茶を濁す。とにかくボロをこちらから出さないのが人に何かを伝える時には一番大事なんじゃないかと思ったのである。

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2-3.口述試験対策(面接&集団討論)

 面接対策が一番大変であった。筆記試験の学習で大いに参考にした「イエロー本」などにおいては、面接試験と論文試験は軽視しており、その意味では世の流れを読み違えていると言わざるを得ない。面接が総合点中1/8しか占めない国家Ⅱ種を念頭においての記述だから仕方がないが、その他の公務員試験、特に地方上級などでは筆記の何倍もの点が口述試験に振り分けられている。つまり「イエロー本」にあるような準備では大半の試験で通用しない。また、それを知った時の僕自身の絶望もとてつもなく深いものであった。
 まず、一番の心配は「志望動機」と「前職の退職理由」であった。志望動機は全受験者が避けて通れず、退職理由は職歴保持者が絶対に逃れられないものである。正直言って僕の公務員試験は終始この2つとの戦いだったと言ってよいと思う。

●退職理由
 僕の正直な退職理由は「もう無理だと思ったから」に尽きる。
見ての通り全く持って後ろ向きの理由であり、前向きのカケラすらない。主観的に見ても、客観的、一般的に見ればなおさら、「逃げた」わけであり、このことは僕自身の中で非常に苦い記憶として受験期間中ずっとあったし、これからも心の中にあり続けるだろうと思っている。

 そんな気持ちを抱えながら勉強はとにかく続けておかなければならなかったが(公務員試験に対する志望が固まってから動き出すのは遅すぎると思ったのだ)、一つの転機を迎えたのは2月ごろに松井秀喜の『不動心』を読んだことであった。
 松井は一昨年に彼の野球人生において初めて大きなケガをした。左手首骨折である。一般的に見れば野球選手がケガをするのはほとんど当たり前のことであるが、松井にとってその骨折は初めてであっただけに非常に重くのしかかったそうである。治療をしても結局骨折した箇所は以前と同じようにくっつくわけではない。ケガと一生付き合っていかなきゃならないんだな、ということを受け入れた時、松井はこう考えたそうである。

 「ぼくは、自分が引退する時に左手に向かって『おい、あの時骨折してよかったよなぁ』って言ってやりたいんです。」。

 今、手元に本がないので覚えている範囲で再現してみたわけだが(都合よく覚えてるだけかもしれない)、率直に言って僕はこの言葉に救われた。「ああ、そうだ。辞めたのはもうしょうがない。僕も『あの時辞めてよかった』と言えるように頑張ろう」とそう思えたのである。あの時、こういう風に発想の転換ができなかったら今こうして合格を噛みしめるなんてことはできていないと確信している。

 「辞めたんだからしょうがない。僕にあるのは約9ヶ月の職歴だけだ。」と思えてからはかなり開き直って取り組めたように思う。大学の就活では手にも取らなかった中谷彰宏の『面接の達人』(ダイヤモンド社)をバイブル版も転職版も買ってきて、中に書いてあったようにまずは「短い9ヶ月の自分の会社生活を原稿用紙100枚を目標にとにかく具体的に書いて振り返ってみること」を始めた。実際にはwordで書いたが、400時詰め原稿用紙に換算すると83枚くらいは書けた。あったことだけではない。その時どう感じたか。こうすればよかった、とかもっと細かな感情なども今までの自分がブログに書いていた日記や入社して3ヶ月くらいは真面目に書いていた仕事日誌などを史料のように掘り起こしながらとにかく分量を書いた。やってみて初めて、9ヶ月間、別に全く無駄なことをやったわけじゃなかったんだ、ちゃんとたくさん学んでいたんだと思えて少しは自信がついた。また、話すだけのネタはすべて挙げたわけで退職理由もこの中から当時の思いに忠実に、建設的で後ろ向きでないものをつくっていけばいいんだと考えられたのも助かった。

 東京都の1次試験が終わってから、かねてより目をつけていたわが県の県庁所在地のTAC提携予備校の面接対策講座の門を叩いた。前職の営業ではほとんど経営者と面談していたため話すことができないとは思っていなかったが、何より中身が心配だったのである。自分が考えたもので人を納得させられるのか、それだけが心配であった。
 その講座は1人の講師がほぼ専属でつき、基本的にはマンツーマンで指導するというものであった。最初は週2回のペースで指導を受けに行った。最初の指導では満足な志望動機すら言えず、退職理由も取り繕ったものを言い「君、嘘はいわんでええよ」と言われた。退職理由では下手にいろいろ隠してそれらしく言うよりも自分の中にあった矛盾などを素直に話してもよいとのアドバイスを受けながらだんだんと自分なりに考えを深めていった。退職理由については最終的に嘘などをつくことなく、在職中に感じた思いを伝えられるように仕上げられたと思っている。

●志望動機
 退職理由と同じように、いや、それ以上に困ったのが志望動機であった。
 僕の第一志望は東京都だったので要するに「なんで東京都で働きたいの?」ということに答えられないといけないわけである。しかしこれがなかなか難しい。最初などは「最先端だから」とか「かっこいいから」とかそんな理由から考え始めた。そのうち、「都でしかやっていない政策を見つけてそれを言うのが一番いいよ」とのアドバイスを受け、そっちの方向で考え始めてはみたものの、よく考えれば都でやれば他の自治体だってそれを参考にする。名前こそ違えど中身は同じような施策ばかりなのである。
 かといって、本当に都でしかやっていない施策を見つけて、志望ではないけど見つけたものを無理矢理言うというのも本意ではなかった。大体、転職しようとしている奴が「公務員なら何でも…」などと言ってるのは愚の骨頂だと思っていたからこの志望動機は意地でもクリアしたかったのである。

 そんな時、再び考え直すきっかけに出会った。この頃の僕は誰かの解答例を求めてネットを彷徨っていたのだが、その中でひっかかったのが喜治塾主催の喜治さんのブログのある記述であった。

 「公務員試験を受けるに至った動機など、極端に言えば、何だって良いのだよ。…ネット上で、いい志望動機ないかなあ・・・?なんて探している間はムダなだけです。さ、パソコンを閉じて、ノートを開き、ペンをもとう。姿勢を正して、必死に考える。自分自身と語らうというのは、かなりのエネルギーのいる消耗戦です。ガンバレ。」(若干改変)

 あ、そうなんだ。じゃあもっと素直に考えようか。こう方針転換ができたのは非常に大きかった。志望動機にあれだけ苦しんでいた僕は結局、東京都の説明会に参加して感じた素直な気持ちを根本に据えることにした。自分なりの志望動機を大急ぎでまとめた。そのすぐ後に模擬面接(講座では毎回模擬面接みたいなもんだった)があった。そこで直前にようやくまとまった志望動機などを話した。なぜか笑顔も交えて生き生きと話すことができた。終わった後はなぜかめちゃめちゃ褒められた。準備はまだまだやることがあったけれど、これはもしかするとイケルかもしれないなと思えたのだった。

※補足1
 『現職人事が書いた 面接試験・官庁訪問の本』(実務教育出版)にもたくさん出てくるが、志望動機に付随して、

「なぜ公務員か」
「民間での転職は考えなかったのか」
「同じ公務員でもなぜ地方公務員なのか」
「国の方がそういう仕事はできると思うが国家公務員は考えなかったのか」
「地方ならなぜ県庁なのか。市役所は考えなかったのか」

 などは容易に予想される質問だが、これらが一番困った。僕は先輩に東京都の志望動機を聞いてもらったときに、「でもそれじゃあなんでわざわざ東京都を受けに来たの?君の近くなら大阪とかだって大都市だし似たような問題を抱えてると思うけどなあ、って切り返されるかもよ」と言われしばらく途方に暮れた覚えがある。
 ただ、いろいろ毎日考え続けた結果、似たような特徴を持つ都市でも「そこに住んだことがあるかないか」ということは志望度合いに相当な影響を与えるのではないかという結論に至った。だから、たぶんもし本番で「大阪は?」と聞かれていたら僕は「住んだことがないので自分の中でやりたいことのイメージが湧きません」などと返してさらに突っ込まれたとしても、なんとかする自信があった。やりたいことなどを志望動機の後に聞いてくるわけだからやりたいことが浮かばないようなフィールドはそもそも志望ができないということに明快につながるのではないかと思っている。
 
●自治体研究
 次は政策対策。論文でもそうだが、面接ではより一層政策を知らねばならない。しかも、僕の通っていた面接対策講座は東京都からあまりにも遠かったので都の事情には先生ですら疎く、これは自分でやるしかないな、絶対頼れない、と思っていた。
 政策を学ぶために重点施策などを丸暗記、という方法もあるらしいが実行はせず。その代わり、Wセミナーの面接対策講座で「情報収集はHPをどんどん開いていけ」と言われたことを実行した。最初はあまり欲張らずに自分の志望する分野2つくらいに絞って、しかしその2つに関わるものならどんどんいろんなページを開いていく、という感じで情報収集を進めた。いろいろと分野を絞って調べているうちにリンクするほかの分野も出てくるので、そうなったら「しめた!」と思って手を広げていった。
 対策講座の中では、行ったことも住んだこともない土地の自治体(警察の話だったが)を受験した人がこのやり方でHPを隅々まで調べあげていったら面接で「あなたほどウチに詳しい人はいなかった。ぜひウチに!」と言われたそうである。そこまでのレベルに行くのは大変だとは思うが、東京都に限らずHPの充実を図っている自治体は多いので使わなければ損だと思った。
 また、最近は知事の会見の様子が動画で配信されるところも多い。東京都はもちろん、僕が受験した県にもそうしたページがあった。知事の記者会見においては地方でも地方紙の記者などが鋭い質問を浴びせようと頑張っており、いわば知事との真剣勝負の場なのである。これは知事の人となりを知る格好の資料になると思うのである。やはりこういう機会できちんと受け答えができないとか、迫力のない知事には幻滅してしまう。そういう意味でも自分の志望度を現実的に考えていくのにも少なからず役立った。
 また、会見の冒頭に「知事からのお話」がある時は、その自治体において今「最もホットな話題」が登場する。民間でも同じだが、トップの関心がどこにあるのか、今その組織で何が一番重要視されているのかを把握しておくのは効率のいい情報収集の仕方であると思う。そして何よりトップの視点を持つことは試験対策だけでなく、今後にも役に立つと感じた。特に、自分が面接で提案する政策(プロジェクト)についてはトップの視点で考えることが第一歩になると思ったからである。

●想定問答について
 予想される質問については、公務員試験特有の質問は『現職人事が書いた面接試験・官庁訪問の本』(実務教育出版)を参考に、その他は『面接の達人 転職問題集』(ダイヤモンド社)を使用しなるべく多くの質問について一度は考えるようにした。『現職人事』本だけでなく、『転職問題集』を使用した意義は、転職に関するあらゆる質問に対応するところにある。前述した「なんで前職を辞めたんですか?」に代表されるものであるが、この「なんで辞めたの?」系の質問のバリエーションは広く、聞き方を変えられればまんまと罠にはまる可能性もある。そのため周到な準備が必要だと考えたのである。

 想定問答はなるべくたくさん紙に書き出した。書き出した質問として具体的には、『現職人事』本の第4章に載っていた質問はすべて、『転職問題集』からは自分に関係ありそうなものや聞かれたらいやだなと思うものを書き出した。それらについての解答として、できるかぎり短く(基本的には一言で)答えられるように考えていった。かっちりそれぞれ200字とか400字で考えるやり方もあるんだろうが、柔軟性に欠けると考えそういうやり方はしないことにした。
 なぜ、文章で考えることが柔軟性に欠けると思ったかというと、想定問答集をかっちり文章で考えた場合、問答集に自分が書いたのと同じ聞かれ方をしないとスムーズに話すことができないのではないかと考えたからである。
 つまり、面接本番でかなり硬い雰囲気の中で「では、あなたの志望動機をお聞かせください」と聞かれれば、「はい。私がこちらを志望した理由は~」とつらつら200字くらいでしゃべるのは何の齟齬もないのだが、最初のアイスブレイク的な会話でかなり盛り上がった後、パッと「でさ、なんでウチがいいの?」と聞かれたときにいきなり固い口調で200字くらい話すというのはコミュニケーションとしてなんとなく成立していないように感じるのである。
 これを、できれば臨機応変に話の流れに合わせて展開したい。
 そのため、僕は基本的にすべての質問に一言で答えられるように解答を考えていった。長くなるものについてはキーワードだけ覚えておくようにした。全くなじみのない人のプロフィールを喋らなきゃいけないのなら相当な暗記が必要だが、喋るのは自分のことである。キーワードだけ覚えておけばそれについての詳しい話は後からいくらでも口をついて出てくる。よく言われるように短いものは長くできる。
 あとは、長くした時に言うための詳しいエピソードをなるべく簡潔によく伝わるように自分なりに加工しておくぐらいである。これは案外大事な作業で、自分では一晩中喋れるような事柄でも、短く喋るためには準備していないとすぐにはできない。よく言われることだが、短いものを長くすることはできても、長いものをその場で短くしながら喋るのは至難の業である、ということを痛感した。

 このように、想定問答集といってもかっちりしたものは作らず、質問だけワードで書いた紙を印刷して持ち歩き、常に何個か頭の中で考えている状態にしていいフレーズが浮かんだらそれをすぐに書きとめて「一言の答え」を磨き上げていくようにしていた。特に答えにくい質問や現段階では答えが出来上がっていない質問は常に頭の中に入れておき、絶えず考える。頭は休まらないし、疲れるし、精神的にもしんどいが、長い間考えたものほど練り上げられると思う。思い浮かんだものは白い紙かなんかにその都度書き出していってまたそれらをヒントに考えていくのが自分なりの答えをつくるための僕にとっては一番の方法であった。

 その他、想定問答を考えるための参考としては、他人のブログや、LECのデータベースなどを参考にした。特に面接再現シートは登録も簡単ですぐに閲覧にでき、幅広く情報を集めるのに大変役に立った。データは少々古いがそこはしょうがない。
リンク→ http://www.lec-jp.com/koumuin/useful/interview/index.html

●集団討論
 模擬集団討論に参加してみて感じたのは、これは予め模擬集団討論をやっておくのが受験上の最低限のマナーであるということだった。
 僕は本番までに2回模擬をやったが、一度は経験のために司会をやった。ヒラの参加者としても、司会のときも一番心がけたのは、「議論を盛り上げること」だった。抽象的な議論が続いている時は、もっと具体的に話し合えるようあるケースを持ち出してみる。そこでしばらく具体的な議論をした上でもう一度抽象的なテーマに戻れば具体例で考えやすくなっている分、また新たな意見も出てくると感じた。

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